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title:  お坊さん便®は、坊主めくりの坊主ではない。

 

 

SOTO禅インターナショナル事務局

内山温子

 

― “インターネットは透明な社会の実現に役立つもの”  八田知巳  株式会社ユニクエスト・オンライン ―

 

2013年に登場したアマゾン「お坊さん便®」について、その僧侶派遣に反対していた全日本仏教会が賛成派に惨敗というニュースは記憶に新しいところである[i]。このサービスを曹洞宗の宗門内で利用したことのある僧侶や寺族、またその家族がどのくらいいるのか存知あげないが、まずはニーズがあっての葬儀・法要であろう。2017年現在、Amazonだけでも提携僧侶数は1,000人を超しており、伝統仏教各宗派の僧侶たちを登録しているせいか、依頼も増えているそうだ[ii]

 

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出典 株式会社みんれびhttps://www.minrevi.co.jp

 

 

このサービスの特徴は、全国どこから依頼しても一律価格であること、登録している僧侶の全員が反社会的勢力排除に関する誓約書に署名していること[iii]。また、各宗派の本部に本当に所属しているか、みんれび社から問い合わせがあり、確認できた人しか依頼を受けることができないようになっていることである[iv]

 

このたび、筆者の父である東堂(僧籍はあるが住職を引退したもの。会社でいえば社長を退いた会長。世襲とは限らない)も寺から出て欧米式に敷地外に住むようになったのを機に、なにか派遣サービスがないか探したところ、業界やニュースで話題になっていた「アマゾンお坊さん便®」に問い合わせをし早速参加をすることにした。依頼する・される側はアマゾンに問い合わせするのではないことに注目していただきたい。

 

場所
日時
内容
金額
神奈川県
足柄下郡湯河原町
自宅
2016
7月2日
二十七回忌
¥20,000
神奈川県
足柄下郡湯河原町
自宅
2016
9月4日
三十三回忌
¥20,000
3
静岡県
富士市
自宅
2016
11月13日
一周忌
¥20,000
4
静岡県
伊東市
自宅
2016
12月17日
四十九日
¥20,000
5
静岡県
沼津市
自宅
2016
12月18日
四十九日
¥30,000
6
神奈川県
小田原市
自宅
2017
6月24日
四十九日
¥30,000
7
静岡県
掛川市
自宅
2017
7月9日
三回忌
¥20,000
8
静岡県
静岡市
自宅
2017
7月14日
初盆
¥20,000
9
静岡県
沼津市
自宅
2017
8月14日
一周忌と初盆
¥26,000
10
静岡県
沼津市
墓前
2017
9月3日
七回忌と三十三回忌
¥26,000
11
静岡県
御殿場市
自宅+墓前
2017
10月8日
一周忌と納骨
¥26,000
12
静岡県
三島市
自宅
2017
10月29日
一周忌
¥20,000

↑右側の数字について。5,6が3万円(戒名授与あり法要)9,10,11が2万6千円(複数人の年忌法要や納骨を同時に)それ以外が通常の2万円が僧侶側に渡る金額。また、自宅というのは筆者宅ではなく施主のお宅。墓地は、10,11とも寺や自宅の敷地内ではない民間の墓地。→スクロール反転すると見えます

 

登録している住所地が静岡県東部の伊豆半島にある伊東市であるため、隣の神奈川県からの依頼も数回受けている。施主からも僧侶からもアクセス至便と派遣側で判断しているのがよくわかるし、内容も、双方の時間や交通費の負担が考慮されている。金額が高いのは戒名[v]授与がある場合。また、祖母の●回忌と祖父の●回忌をいっぺんにやれば、いちいち一族郎党集まらなくてすむというのもある。近年業界で浸透しているスタイルであり、今後確実に訪れる多死社会に適応しはじめているといえる。それでも繁忙期に人手が足りない、というのには驚いた。これだけ寺離れが叫ばれているのに、ニーズはあるのだ。お盆前に確かに予定を聞くメールが来たし、みんれびのほうでマーケティングをしながらでないと、とても間に合っていないという印象を受けた。

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カラーの円グラフは『喪主 涼永博史の10ヶ月』http://www.mosyu.net/s/

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白黒の円グラフは株式会社みんれび https://www.minrevi.co.jp より引用。

 

みんれび社の場合は、80歳以上の僧侶も登録している。流れ作業的に依頼されるような内容ではなく、まさに一期一会の出会いがあるそうだ。東堂によれば、自分にはむしろあっているやり方とのことである。また、住職だけが仕事をとってしまい弟子に全然実践のチャンスが与えられていない、労働法違反の只働き等ハラスメントを受けている状態にある人にとってもよさそうだと感じた。というのも、アマゾンの場合はユニクエストと違い、本部に許可をとればいいため、周囲に困っている状況を知らせる手段にもなりうる。 「檀家に入らないのがいい」ということについては、同じ僧侶のリピーターになりたい場合、またその都度みんれびに申し出ればよく、のちのち本当に檀家になるひともいることも付記しておく。「本当に約束した当日に頼んだ人が来るのか?」という声については、こちらもドタキャンされるのではないか互いに不安なものであるとしておきたい。「大雪でも来てくれる」というのは、遠方で交通アクシデントがあれば約束に間に合わないというリスクが減るし、曹洞宗なら同じ曹洞宗の人がやってきて同じお経を読むのであるから、例えていうならば消防や救急システムのようなものであろう。全体的に、おおむね賛同の声が多数であった。これが「定価が炙り出す真価[vi]」である。

 

 

ところで仏教経済学は従来の経済学でカバーできない[vii]とされていたが、どうだろうか?神社や寺に参拝したひとびとがその記録を共有しあう「ホトカミ」[viii]などは自然に社寺の広告として機能しているし、みんれびやユニクエスト・オンラインが、見事にカバーしているではないか? たとえば宗教儀礼のひとつである「法要」を英訳しようとするとServiceという単語も使うし、何らかの労力と、それへの対価が発生するのであれば、それは商品といってさしつかえない。筆者は経済学の専門ではないが、このやり方は贈与経済にあたると辞書レベルで書いてある。アマゾンはインターネット上でみんれびのサービス製品をさまざまなルートで買えるよう、施主側に情報の窓口を広げているのである。改めて、全日本仏教会から批判される筋合いはまったくないと考える。

 

さらに、「直送、散骨、墓じまい…進む「弔い簡素化」の行方は」(第一生命経済研究所・小谷みどり)に対して、佐藤葬祭の佐藤信顕@satonobuaki on twitter は、このような状況になっている背景として、消費税が上がったからであるとハッキリ指摘している。

― “不景気だからにきまってるじゃんw高齢化も未婚も少子化も葬儀の簡素化も銭が無いっていうのは主な原因です。平たくいうと消費税をあげたからです。”―

 

そもそも「僧侶は蕎麦屋の出前ではない」「布施を商品化するな!」[ix]などと批判していた全日本仏教会というのは、政治色も非常に強い団体で、消費税以外にもさまざまな増税を公約とする政治家を選挙のたびに推薦していることで知られているのだから、みんれびやユニクエスト・オンラインの躍進する状況は因果応報だろう。

 

彼らが派遣に反対していた理由は大きくわけて2つあると思う。ひとつは、その収入は課税対象になるのではないか、もうひとつは、布施の額は「お気持ちのままで」を崩したくないから。しかし課税されたら払うものは払うのが世間の決まりであるし、払っていたら悪さをしていいというものでもないが、どの口で批判するのかといいたい。施主が払っているのは僧侶に対してではなく(そういう場合もあるだろうが)、お経の中身や教えが妥当だからだろう。それでも施主にもっと払えなどという寺院や僧侶は、自分の読経や布施は2-3万円の価値か?という自分基準であって、彼らが、いままで坊主丸儲け的に得ていた収入が手に入らなくなって困るだけである。

 

「正しい。がんばれ。」という以外にも賛否両論は、もちろんあった。例えば、「「注文」される僧侶が明かすアマゾン僧侶派遣サービスの実態」IRONNA.jp の瓜生崇氏の場合は、記事を読む限り反対の立場である。この方は、浄土真宗の名をかたる破壊的カルト「親鸞会」を脱会し大変な苦労をされて現在は本願寺の僧侶として活躍されているが、そういうものに迷ってしまったくらいだから、おそらく既存仏教の経営事情をなんとかしようなどという我々(選んで寺に生まれたわけではない)の苦労はイメージできないのだろう。

 

だいたいが同じ宗門内でも、寺族問題の専門家として毎年、規則にないデスマス調で紀要に投稿している瀬野女史でさえ、近年問題になって宗門で寺族も両大本山で得度し安名(戒名)を授かることを義務づけているのにもかかわらず、それをしないで違反のまま給料をもらっていたり、僧堂や尼僧堂で修行せず単に坊主頭にしてるだけとか、葬儀代の請求書(!)をもって借金の取立てのように押しかける寺族だとか、そういった苦情は一切無視である。勝手に浄土真宗や曹洞宗を名乗る単立が、街中でインチキ[x]托鉢をしていたり反社会勢力を囲っていても、彼女たちは、そういう事件にも無頓着である。どこか法律にも抜け穴があるのだろうが、そろそろ親鸞や道元、浄土真宗や曹洞宗などの名前そのものに商標登録が要るのではないかとすら思う。仏像や伽藍など重要文化財をもっていて教育委員会の看板もあるが管理人が居ないとか、後継者がいないとかいうだけの理由で社寺がつぶされないための智恵を我々は持っているべきである。あまりに問題ある宗教法人には経済産業省からお叱りがくるというが、このサービスの登場によって、業務体系を見直したり、吸収合併がすすんだり、ブローカーに魂をうることなくスムーズに閉店する寺院が出てくることは期待できそうだ。立地や分布を参考にした研究は少ないが[xi]、宗勢調査も参考にし海外寺院、日系社会との情報交換をしながら折りに触れて分析してみたい。

¥35,000~¥55,000

施主がみんれびに支払う額は、とにかくこれ以上でもこれ以下でもない。これは、SZI=SOTO禅インターナショナル事務局に所属する日系ハワイ寺院に長かった僧侶たちに聞いたところ、ハワイでの法要よりも少し安いか同じくらいの金額という。筆者は、祖母の三回忌をSFZC=サンフランシスコ禅センターに依頼(http://zuien-ji.dreamlog.jp/archives/5125084.html)した際は500ドルお支払いしたが、それは法要代としては高いとのこと。しかしアメリカではFuneral Planという保険に入っている人がほとんどで、日本の相場、葬儀屋に出す金額を含めて数百万も同じ日に払うというような払い方は、ありえないのだそうだ。(そもそもアメリカの場合は宗教法人は非営利団体の扱いであり、日本の宗教法人格とはまったく異なる。)

もし儒教色の強い教育をうけてきたひとであっても、かの無住道曉(1227-1312)でさえ『沙石集』のなかで「仏道者であるならば、正しく修行が出来ていなければなりません。在家者も、恩に報いることが必要です。そのような基本をせずに、ただ利を貪ろうとするから、罪の問題が取り沙汰されるのです[xii]」と申しているので、このような時代の変化に対応することは現代の日本人はメディアでいうほど、それほど抵抗はないであろう。むしろ待望の新製品が誕生した喜びである。ISO規格も、あらゆる組織に応用できると聞いている。私は「求道か護持か[xiii]」(勝 2016)に賛成しつつも、「求道も護持も」でありたいと思う。

 

©Haruko Uchiyama 2017

 

 

 

[i] 井上 2016

[ii]  https://www.minrevi.co.jp

[iii] International Emergency Economic Powers Act 国際緊急経済権限法,United States of America,1977. Treasury Targets Leading Figures of Transnational Criminal Organizations(1/23),United States of America,2013. 日本でも、暴力団対策法や各都道府県・各市町村で暴力団排除条例が施行されている。

[iv] 本来は各宗本部で一人ひとりに署名させるほうが安全だし、足を洗わせたいのであれば人権学習を通じて各都道府県の暴力団追放センターから講師を呼び、研修を受けるのが妥当と筆者は考える。

[v] 戒名は洗礼名のようなもの。

[vi] 勝 2016

[vii] 武井昭,仏教経済研究vol30,p.261,2001

[viii] ホトカミ-みんなでつくる神社お寺の投稿サイト https://hotokami.jp

[ix] 産経新聞 2015/12/25

[x] インチキ募金の類だが、偽僧侶というのはsnsの時代、本当にあらゆるところで発見されている。資格もないのに全宗派の衣をそろえ(おそらくオンラインショッピングで)コスプレ感覚で法事を請け負っていたものがいると噂になったこともある。いったいどんな読経をしていたのだろうか、そして詐欺師によるインチキ法事だと気づかない施主もいかがなものか疑問である。

[xi] 「仏教寺院の全国的立地と曹洞宗寺院の地域的分布―2005年都道府県別立地特化度を中心に―」『仏教経済研究第35号』駒澤大学仏教経済研究所,藤本典嗣,2006.

[xii] 「無住道曉『沙石集』の紹介(14f)」つらつら日暮らし(2017.1.28)blog.goo.ne.jp/tenjin95

[xiii] 勝 2016

 

 

 

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参考資料一覧

「アマゾン「お坊さん便」に噛み付いた全日仏の本末転倒な誤謬」宗教問題vol.14,合同会社宗教問題,勝桂子,2016.

「アマゾンの「僧侶派遣」仏教会が批判」産経新聞(12/25),2015.

「インタビュー    インターネットは葬儀含めすべてを“透明化”する」宗教問題vol.14,合同会社宗教問題,八田知巳,2016

「お坊さん便の口コミ、実際たのんでみたらこうだった!」『喪主 涼永博史の10ヶ月』http://www.moshu.net/s/obousanbin.html

「神社界の経営難と人材難は今後の仏教界の姿か?」つらつら日暮らし(2017.1.22)blog.goo.ne.jp/tenjin95

「全日本仏教会に圧勝した「アマゾンお坊さん便」」宗教問題vol.14,合同会社宗教問題,井上理津子,2016.

「贈与経済の論理と寺院経済」『仏教経済研究第18号』駒澤大学仏教経済研究所,武井昭,1989,p.73.

「迫真HAKUSHIN 子に迷惑かけたくない 大終活時代1」日本経済新聞(3/21)2017.

「仏教寺院の全国的立地と曹洞宗寺院の地域的分布―2005年都道府県別立地特化度を中心に―」『仏教経済研究第35号』駒澤大学仏教経済研究所,藤本典嗣,2006.

「布施と非経済コスト最小原理経済の提唱」『仏教経済研究第30号』,駒澤大学仏教経済研究所,武井昭,p255-262,2001.